葬儀社の人は、葬儀で泣かないの?
葬祭部の門脇です。
「葬儀社の人は、葬儀で泣かないの?」
そう聞かれることがあります。
私は、葬儀で泣いたことがありません。
悲しくないわけではありません。
涙が出ないわけでもありません。
そう教えられてきたからです。
映画『ほどなく、お別れです』の中に、主人公が「泣くなら葬儀から出なさい」と言われる場面があります。
その場面を見たとき、私は自分が葬儀の仕事を始めた頃のことを思い出しました。
当時の上司であり、私にとって師匠のような存在だった方から、葬儀の仕事を始めたばかりの私に言われたことがあります。
「故人様を送る仕事をする人間が、泣いていては仕事ができない」
だから、葬儀では泣いてはいけない。
それが、私が最初に教わったことの一つでした。
葬儀の仕事は、故人様を最後にお送りする仕事です。
ご遺族の悲しみに寄り添いながら、葬儀の準備を進め、式を滞りなく終え、最後まで故人様をお送りする。
その役割を担う人間が、自分の悲しみに飲み込まれていては、その仕事を果たすことができません。
だから私は、葬儀では泣かない。
そうやって、この仕事を続けてきました。
ただ、私は「葬儀社の人間は泣いてはいけない」と、今でもすべての人に思っているわけではありません。
悲しいときに涙が出るのは、自然なことです。
泣くことが悪いことだとも思いません。
私自身、一度だけ、本当に泣きそうになった葬儀があります。
私が葬儀の仕事を始めて、3回目に担当したお客様でした。
そのときの喪主様とは、その後もご縁が続きました。
私は一度、葬儀の仕事を離れ、リフォームの仕事をしていた時期があります。
そのとき、その方は私の最初のお客様になってくださいました。
葬儀の仕事を離れても、別の仕事を通してお付き合いが続いていたのです。
その後、私は再び葬儀の仕事に戻りました。
そして、ある日、その方がお亡くなりになりました。
その葬儀を担当したのが、私でした。
葬儀の仕事を始めて3回目に担当した方。
葬儀の仕事を離れたとき、初めてのお客様になってくださった方。
そして、葬儀の仕事に戻った私が、その方を最後にお送りすることになった。
さすがに、そのときは胸にこみ上げるものがありました。
「この方を、自分が送るんだ」
そう思った瞬間、涙が出そうになりました。
それでも、私は泣きませんでした。
そこで師匠から教わった言葉を思い出した、ということもあります。
でも、それだけではありません。
その方とのこれまでのご縁を思えば思うほど、最後に自分がするべきことは、悲しむことではなく、きちんとお送りすることだと思ったからです。
泣くことは、悲しみを表す一つの方法です。
でも、泣かないことが悲しくないという意味でもありません。
涙をこらえながら、故人様を最後までお送りする。
それもまた、悲しみの中でできる一つの形なのだと思います。
私はこれからも、葬儀では泣かないと思います。
それは、悲しくないからではありません。
故人様を最後までしっかりとお送りする。
その役割を果たしたいからです。
葬儀社として、悲しみの中にいるご家族の前で、最後まで落ち着いていること。
そして、故人様をきちんとお送りすること。
それが、私が師匠から教わり、今も大切にしている仕事への向き合い方です。

