深夜の電話
葬祭部の門脇です。
私は葬儀業界に長くいます。
この仕事をしていると、どうしても避けることのできない、悲しい経験があります。
それは、以前お世話になったお客様が亡くなられることです。
先日の夜中のことでした。
寝ていると、突然、私用の携帯電話が鳴りました。
すぐに電話に出ると、
「門脇くん? 今、母親が亡くなったんやけど、お迎え頼めるかな?」
そう言われました。
電話をかけてこられたのは、私が15年前、以前の葬儀社に勤めていた頃のお客様でした。
今回亡くなられたお母様と息子さんからは、以前から「自分の葬儀の時は門脇さんにお願いします」と言っていただいていました。
しかし、私はすでにその会社を退職しています。
そのことを伝えると、息子さんは残念そうに、
「そうなんか……ごめんな」
と謝ってくださいました。
私も申し訳ない気持ちになりました。
そこで、私から以前勤めていた会社に搬送を依頼し、翌日、ご自宅へご挨拶に伺いました。
そのお母様とは、葬儀が終わってからもお付き合いが続いていました。
ご自宅を訪問すると、1~2時間ほどいろいろなお話をさせてもらいました。
そして、帰る時には必ずカフェオレの缶ジュースを用意してくださっていました。
「これ、持って帰り」
いつもそう言って渡してくださるのです。
だから、その日ご自宅へ伺う時には、いつも頂いていたカフェオレを買って持っていきました。
そして、お供えさせていただきました。
その時、ご家族から亡くなるまでのお母様の様子や、最後のお話を聞かせていただきました。
その中で、
「葬儀は門脇さんにお願いしたい」
と、最後まで言ってくださっていたことを知りました。
ありがたい気持ちと同時に、胸が苦しくなりました。
「もし、私があの会社を辞めていなかったら……」
そう思わずにはいられませんでした。
もちろん、今の私にはどうすることもできません。
それでも、長い間お世話になった方が亡くなられた時に、自分は何もしてあげられない。
そのことが、とてもつらく感じました。
以前勤めていた会社の方とは、今でも2か月に1回くらい食事に行っています。
そこで、私が以前担当させていただいたお客様が亡くなられたことを聞くことがあります。
葬儀の仕事では、たくさんの方と出会います。
その時は仕事として出会った方でも、何度もお話をしたり、ご自宅へ伺ったりするうちに、いつの間にか自分の中にその方との思い出が残っていきます。
だからこそ、その方が亡くなられたと聞くと、やはりつらいものがあります。
葬儀の仕事で大変なことはいろいろあります。
しかし、私がこの仕事をしていて一番つらいと感じるのは、
「以前お世話になった方の最後に、自分が関われないこと」
なのかもしれません。
長くこの仕事をしているからこそ、出会った人との別れも、少しずつ増えていくのだと思います。

