「まさか」の依頼 ~葬儀社で実際にあった出来事~
葬祭部の門脇です。
葬儀の仕事に携わっていると、「こんなことが本当にあるのか」と驚くような出来事を何度か経験してきました。
その中でも、今でも忘れられない出来事があります。
私が以前、加西市の葬儀会館で勤務していた頃の話です。
当時の葬儀社には「宿直」という業務がありました。夜間は葬儀会館に待機し、ご逝去の連絡が入ると病院や施設へお迎えに伺います。その後、ご安置やご家族とのお打ち合わせなどを行うのが主な仕事でした。
ある日の深夜、一件のご依頼が入りました。
「病院で父が亡くなったので、午前2時に○○病院の○階まで迎えに来てもらえますか。」
私は亡くなられた方のお名前やご安置先、ご自宅の住所など、必要事項を確認し、すぐに病院へ向かいました。
病院に到着し、警備員の方へ故人様のお名前をお伝えすると、
「そのような方がお亡くなりになったという連絡は受けていません。」
との返答でした。
病棟にも確認していただきましたが、
「そのお名前の患者様は入院されていません。」
という結果でした。
「病院を聞き間違えたのだろうか。」
そう思い、依頼者へ何度も電話をかけました。しかし、何度かけても電話はつながりません。
気が付けば1時間以上が過ぎ、どうしてよいか分からない状態になっていました。
その時、ふとご自宅の住所を伺っていたことを思い出しました。
もしかすると何か事情があるのかもしれないと思い、その住所へ向かいました。
到着すると家の中は真っ暗で、人が起きている様子はありません。それでも確認しないわけにはいかず、インターホンを押しました。
一度目は反応がありませんでしたが、二度目で家に明かりが灯り、玄関の扉が開きました。
出てこられたのは60代くらいの男性でした。
私は深夜に突然訪問してしまったことをお詫びし、病院から依頼を受けてお迎えに伺った経緯を説明しました。
すると、その男性は何かを察したように、
「ああ……すみません。それは嫌がらせですね。最近、そういうことがあるんですよ。」
と話してくださいました。
事情が分かり、何度も謝罪を受けました。
もちろん、本当にご不幸があったわけではなかったので、その点は安心しました。
ただ、今振り返っても少し不思議に思うことがあります。
もし本当に私たちへの嫌がらせが目的だったのであれば、「自宅で亡くなられた」と伝えて自宅へ向かわせた方が確実だったはずです。
今回は病院に患者様がおられないことが分かった時点で、私が「何かおかしい」と判断して引き返していた可能性もありました。
そう考えると、この電話の目的は何だったのだろうと、今でも少し腑に落ちない出来事です。
実は、このような虚偽の葬儀依頼や搬送依頼は、この一件だけではありません。
指定された住所へ行くと空き家だったこともありましたし、いたずら電話と思われる依頼を受けたことも何度かあります。
長くこの仕事をしていると、小説やドラマの中でしか起こらないような出来事に現実で遭遇することがあります。
今回のようないたずらの話もあれば、不思議な出来事や、思わず考えさせられる出来事、人と人とのつながりを感じる心温まる物語もあります。
葬儀社という仕事だからこそ経験できる出来事は、本当に数え切れません。
また機会があれば、印象に残っているエピソードをお話ししたいと思います。

