「母さん、今日はポット押した?」
葬祭部の義積です。お盆も過ぎて、当館もみじの周りにはトンボが飛んでいます。まだまだ暑いですが、ほんの少し秋になった気持ちになります。
「いずれ年を取ったとき、孤独死だけは避けたいんです」
先日、お一人暮らしのお客様から、そんなお話を伺いました。隣町には兄弟もいる。まったく身寄りがないわけではない。でも、何かあったときに、すぐに気づいてもらえるようなものがあればいいのになあ……。
その言葉を聞いて、ふと思い出したものがあります。
子どもの頃に見た、昔のテレビCMです。
離れて暮らすお母さんと息子。お母さんが家で電気ポットを使うと、その情報が遠く離れた息子に届くというものでした。
「京都の親がポットを押したら、電波がピッピッピ」
「東京の息子にメールが届く」
そして、息子が、
「母さん、今朝から押してない」
すると、お母さんが、
「忘れたのかい。今日は墓参り~♪」
そんなやり取りだったと記憶しています。
子どもだった私は、「ポットを押したら、なんで東京に分かるんだろう?」くらいにしか思っていませんでした。
ところが、調べてみると、このCMの商品は今も続いていました。
象印の「みまもりほっとライン」です。
現在の「iポット」には通信機能が付いていて、ポットを使うと、その情報が離れて暮らす家族にメールで届きます。インターネットやWi-Fiを自宅に用意する必要もありません。いつものようにお湯を沸かす。それだけで、遠くにいる家族が「今日も使っているな」と確認できる仕組みです。
今は、ポットだけではありません。
スマートフォンで毎日「元気です」とチェックインし、一定期間反応がなければ、登録した家族に自動で知らせてくれるアプリもあります。たとえば「生きているか?」というアプリでは、毎日のチェックインがなくなると、2日間で緊急連絡先へ自動通知する仕組みになっています。また、家の中にセンサーを置き、ドアの開閉や人の動きが一定時間ないと、スマートフォンに知らせてくれるサービスもあります。
昔は「電話をする」が安否確認の方法でした。今は、ポットやスマートフォン、センサーが代わりに知らせてくれる。便利になったものです。しかし、こうしたものがあるからといって、「孤独死がなくなる」というわけではありません。大切なのは、何かあったときに、誰かが気づける仕組みをあらかじめ作っておくことなのだと思います。
「何かあればいいのになあ」
お客様の言葉を聞いて、私も他人事ではないと思いました。私にも、離れて暮らす娘がいます。まだ元気に暮らしている今は、「毎日連絡しなくても大丈夫」と思っています。でも、いつか年を重ねたときには、私がポットを使ったり、スマートフォンを一度押したりするだけで、「今日も元気なんだな」と娘に伝わるものがあればいいなと思います。
そして、もし「今日は何も届かないな」となったときには、娘が「どうしたんだろう」と気づいてくれる。
昔のCMに出てきたポットは、今も形を変えながら、離れて暮らす家族をつないでいるようです。
一人で暮らすことと、一人で生きることは、少し違うのかもしれません。
離れていても、誰かとつながっている。
そんな仕組みを、元気なうちから考えておくことも、これからの暮らしの準備の一つなのだと思います。

