もみじブログ

お葬式あれこれ

一枚の着物に託された、父の願い

葬祭部の杉上です。

 

お父様の納棺の際、「一緒に入れてあげたいものがあって」と差し出されたのは、女性用の着物でした。よく見ると、それはまるでお人形が身にまとうような、ミニチュアサイズの着物です。

 

「作られたんですか? 素晴らしいですね」とお声がけすると、
「私がお嫁に行くときに、父が選んで持たせてくれた着物なんです」と、娘さんが教えてくださいました。

 

その着物は、当時のものを仕立て直し、ミニチュアの着物として生まれ変わったものでした。梅と手毬があしらわれた、小紋の着物です。

 

梅は、寒さの残る冬に花を咲かせることから、逆境に負けない強さを表すといわれています。また、実を多く結ぶことから、子孫繁栄や安産への願いも込められた文様です。

 

手毬には、丸い形から「家庭円満」や「何事も丸く収まるように」という意味があり、子どもが健やかに、豊かに育つようにとの想いが託されています。

 

 

丹波市山南町から遠く離れた場所へ嫁ぐ娘のこれからの人生の幸せを願い、そっと背中を押すように選ばれた柄だったのだと感じました。

 

納棺の時間、娘さんはその小さな着物を手にしながら、
「この着物を仕上げるまで、頑張って生きてよ、と父に言ってたんです」と話してくださいました。

 

形になるまでの時間も、
針を運ぶ一針一針にも、
お父様との日々が、静かに重ねられていたのだと思います。

 

出棺前、娘さんは棺に向かい、
「今までありがとう。私たちのこと、見守ってね」と、
涙ながらに声をかけていらっしゃいました。

 

そのお姿から、
父と娘の間にあった深い愛情が、静かに伝わってきました。

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