故人様へのお手紙

葬祭部の広田です。

入社して1年目の頃、まだまだ未熟で葬儀を無事に終わらせることだけしか考えていませんでした。
お客様からしたらそれで十分と思うかもしれませんが「自分なんかじゃなくて先輩が担当したほうがもっと素敵なお別れが演出できたのでは」と考えていました。

そんな時、K様の葬儀担当をさせていただきました。やはり他の葬儀と同じように、バタバタと葬儀準備に奔走するだけで当家の心に残る葬儀ができたとは思えませんでした。ですが、ご主人を亡くされた奥様や喪主様からとても感謝いただき、嬉しい反面 心の中はモヤモヤしていました。

葬儀が終わり、奥様と葬儀後の話やその他の話をするようになり私は楽しくてK様のおうちにちょくちょく足を運んでいました。ご主人を亡くされた悲しみを緩和するためと、私自身の葬儀の部分で足りなかった部分を挽回する意味があったと思います。
実はこの頃、葬儀の仕事を辞めようかどうか悩んでいまいた。しかしK様と話しているうちに「このまま辞めてしまったらこうやって拙い担当でも頼ってくれて、そして沢山ありがとうと声をかけてくれるお客様を裏切ることになるんじゃないか」と考えるようになりました。そしてなにより、ここまでの成長の機会をくださった故人様にも失礼だと思うようになりました。

しんどいのは全て自分が未熟なせい、自分がもっと成長すればいいだけの話だと気が付かされました。

 

それから7年、多くの葬儀を経験させていただき、担当をする時には様々な演出や工夫を提案し、自分の中で常に「もみじ一番の担当者」と自信をもって臨むようにしています。「他の人がこの当家の葬儀担当をしたほうが…」なんて考えはお客様に失礼なので捨てました。

そして最近、悲しいことがありました。この仕事を頑張るきっかけをくださったK様が亡くなりました。
訃報を聞いた瞬間、K様の色んな表情が浮かびました。落ち込みました。ですが直ぐにK様の息子様達の顔も浮かび「今困っていらっしゃる、悲しんでいらっしゃる。息子様達を助けられるのは自分だ。K様、成長した私を見ていてください」と、すぐに動き出しました。

それからは今までの経験を全てぶつけるように、息子様達に多くの演出を提案しました。猫好きのお母様にしてあげられることは何か。
お母様の好きな食べ物は?趣味は?誕生日は?今年のクリスマスは?お花のプレゼントは? …本当にたくさん提案し、息子様達も全て応えてくださいました。

そして一番大切な演出として、お母様への手紙を提案しました。
実は手紙というのは一番ハードルが高い提案で「恥ずかしい」と仰られる方が多いです。そこで少しでもハードルを下げるために「私もお母様に伝えたい言葉があるので、手紙を書かせてもらってもいいですか?」と葬儀担当者の私がお母様へ手紙を書く気持ちがあることを伝えました。こうすることで息子様達にも手紙を書くきっかけを作ることが出来、そしてなんとお別れの際にはお孫様含め合計7名の手紙が読み上げられました。

葬儀が終わり「普段言えなかった感謝の言葉を最後に母に伝えられてよかったです。絶対に後悔や悲しみは残るけど、それが和らいだお葬式になりました」と言っていただきました。
葬儀から数日経ってからも、「もっとこうしてあげたほうが良かったかなって少し考えてしまうけど、でも『お別れの時にあれしたし、通夜の時はこれ一緒になって食べてるみたいにお供えしたし』って思えるんです。だから本当に色々やって良かった。広田さんが『アレしましょう、コレしましょう』って言ってくれたから、自分たちも最後やし何でもやろうっていう気持ちになれた」とおっしゃってくださいました。

こういったお別れの演出。そしていただいたこの言葉。これが一年目の私が出来なかったことで、多くの経験をさせていただき成長した私が思う理想のお別れの形です。

私がK様に宛てた手紙の最後には「私の成長した姿を見ていてくださいね」と書いたのでK様もどこかで見ていてくれたと思います。

本当はK様からの「いいお別れをありがとう」という声を聞きたかったですけど、息子様達からたくさんいただいたので十分です。葬儀から少し経ちましたがK様、あらためて沢山の感謝を込めて「ありがとうございました」