「魂でもいいから、そばにいて」
ジャーナリストの奥野修司さんの書かれた本を読みました。
3月11日の震災で、家族を失った者の元に、亡くなった人が現れる霊体験を奥野さんが聞かれた記録です。恐怖体験ではなく津波で突然家族の死を突き付けられ、悲しみにくれる中、魂と出会うという不思議な体験内容です。
本の中にこのような話がありました。
石巻のあるおばあさんが、近所の人から「あんたんとこのおじいさんの霊が○○の十字路に出たそう。」と聞けば何で自分の前に現れてくれないんだろうと思い、毎晩その十字路に立たれた。という内容です。切ない気持ちがひしひしと分かります。
私もそのおばあさんなら、毎晩立ちます。
「この人達は家族や恋人大切な人の霊は、怖いどころか遭いたいと望んでいる。この人達にとって此岸(この世)と彼岸(あの世)はたいして差がないのだ。むしろ深い悲しみの中で体験する亡き人との再会は、遺された人に安らぎや希望、喜びを与えてくれるのだろう。」と奥野さんは書かれています。
霊は怖いもの、と思われがちですが、大切な人の霊であれば全く別のものなのですね。
人はいづれどこかで終わりが来ます。しかし、何らかの形で亡くなった人と繋がっているような気持ちにさせてくれた一冊でした。
義積