葬祭部の山下です。
この記事は前回10/5の記事「【前編】故人様の想いを少しでも分かりたい」の続き【後編】になります。【前編】記事は下記のリンクよりご覧ください。
さて、私が向かったのは大阪府南河内郡にある「取要山 法華寺」というお寺です。
6名という少人数で行い、約2時間の講座です。一人で参加し、受講生の方も初めましての方ばかりなので緊張しましたが、ご住職の庄司様に温かく迎えていただき、講座がスタートしました。
最初に受講生1人につき、20枚のふせんが配られます。それぞれ「物」「人」「思い出」「行動」と4つの分野で色分けされており、1つの分野につき5つずつ、それぞれ自分が大切にしていることをふせんに書きだします。これで自分の身の回りの大切にしていることが20個机の上に並びます。
そして、次がこの講座のメインになるのですが、ご住職が「死の体験旅行」の物語を語られます。詳細はここでは書けませんが、簡単に言いますと、自分が末期の病気になり、命を終えていく過程を疑似体験するストーリーです。部屋を暗くして目を閉じてその物語を聞き、自らが物語の主人公として、自分と重ね合わせていきます。この物語が進むにつれ、節目ごとに机の上に並べた自分の大切なものを少しずつ捨てていきます。実際にふせんをくしゃくしゃに握り、机の下にそっと置きます。捨てるということ行動は非常に残酷に聞こえますが、命を終えていく過程に置き換えると、自分の大切なことを少しずつ諦めていくというイメージです。少しずつふせんが少なくなり、最期には残った1枚もくしゃくしゃにして諦めることになります。
物語が終わると、そっと目を開け、いま自分の命が自分の体の中に満ちていることをしっかりと嚙み締めます。最後に受講生の皆様とグループワークで講座を通して感じたことを話し合い、このワークショップは終了です。
講座を通して、まず私が感じたことは、自分の命を終えていく過程というのは大変孤独で辛いことでした。周りの方の支えがあったとしても限られた時間と向き合う自分の気持ちは自分にしか分からないし、自分の体が思うようにならないことから、イライラして大切な人に八つ当たりしてしまう。どんなに冷静になろうとしても、こういった感情は必ず出てくると思いました。
その中で自分の大切なことを諦めていくということは、なおさら辛いことです。大切なことを書いたふせんをくしゃっと握る瞬間は疑似体験であったとしても胸がぎゅっと痛くなりました。受講生の方の中には涙を流されている方もおられました。
私が最後まで残した大切なものは「人」のふせんであり、それは家族の名前をそれぞれ書いたものでした。やはり、毎日当たり前に居る存在だからこそ自分にとって無くてはならないものであり、1人1人の顔を思い浮かべると、もっと大切にしていきたい人達であること、改めて感謝したいと思わせてくれる瞬間でした。
人が命を終えていく過程というものは、一通りではありません。人の数だけ様々なストーリーがあると思います。中には、予期せぬことで突然亡くなってしまうこともあれば、今回の物語のように自分の余命が分かってから残された時間をどう過ごすか考えていく場合もあります。受講生の方の中には、突然死よりは周りの方に感謝を伝える時間や、自分の気持ちを整理する時間があった方がある意味では幸せなのかもしれないと仰った方もおられました。私はまだそこまで達観した考えを見出すことはできませんが、辛い中でも目標を持って自分のやりたいことをやる、大切な人にはきちんと感謝の気持ちを伝えて心残りがないようにすることは自分の人生を全うする意味で大切なことだと思いました。
色々な考え方があるとは思いますが、こうした過程を終えられてお出会いする故人様に対して、私はまずしっかりと礼儀を尽くしていきたいと思います。お迎えからご安置、納棺、そして葬儀と故人様と向き合う場面は随所にありますが、敬意を払って故人様の身体に触れたり、お声掛けをしていきたいです。
また、その故人様が大切にされてきたご家族に対しても誠意を持ってお話を丁寧に聞いていきたいです。故人様の想いを一番良く知る方々なので、故人様がどのようなことを大切にしてこられたのか、やり残されたことはないか、またご家族にとっても故人様にやってあげたかったことはないか、心残りが無いように私たちがサポートしてそのお別れのお手伝いができるように向き合っていきたいと思いました。
今後ともこういった機会があれば参加して、勉強していきたいと思います。
人間誰にでも「死」は訪れ、受け入れなければならないものです。まだ自分とは関係ないと思われる方もおられるかもしれませんが、こういった機会を持つことにより、限られた人生の中で何を大切に生きていきたいか考えるきっかけになったり、自分の日常に改めて感謝することに気付かされたりします。自分を見つめ直す意味でも、ぜひ興味のある方は一度、受講されてみてはいかがでしょうか。
今回は記事が2回に渡り長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。