葬祭部の山下です。
先日、納棺の際の仏衣への着せ替えを、先輩スタッフについてお手伝いさせていただきました。
「納棺」とは亡くなられた方の御身体を、お棺の中に納めることです。その際に当家の方のご希望を伺ったうえで、オプションにはなりますが、メイクやご希望のお召し物へお着替え、ボディシャワー(湯灌)等を行います。
また、納棺の際には仏衣(白いお着物)へのお着替えに加え、故人様がこれから歩まれる49日間(中陰)の旅へ向けて以下のような旅支度をお身体に装着させていただきます。
・足袋(たび):旅の途中に脱げないよう足首のところを紐で結びます。
・脚絆(きゃはん):すねを守り、足を疲れにくくします。
・手甲(てっこう):手の中指から引っ掛けて装着し、手元を守ります。
・頭陀袋(ずだぶくろ):三途の川の渡し賃と言われる六文銭(紙に印刷したもの)を入れた袋を首から掛けて胸元に置きます。
・数珠(じゅず):お手元に置きます。数珠はこちらで準備はしますが、故人様が生前ご使用になっているものがあれば、そちらを使用します。
・天冠(てんかん):額につける三画形の布です。現在では、直接額にはつけず、そのままお柩の枕元に納めることが多いです。
・笠(かさ):頭に被るものですが、これも天冠と同様、枕元にそのまま納めます。
・草履(ぞうり):本来は足に履かせてあげるものですが、直接履かせることが難しいのでお柩の中の足元に納めます。
・杖(つえ):故人様の利き手側の方に納めます。
※上記は仏式の一般的な例ですので、宗派や地域によっては異なります。
また、仏衣以外のご希望のお召し物に着替えられた場合で旅支度の装着に抵抗があるとご当家の方が感じられた場合は、実際に装着せずに全てお柩に納めるのみにいたします。
このような旅支度をご家族様へお声掛けして、一緒に行うことをご提案しております。
これは単なる慣習的な意味だけではなく、ご家族様が実際に故人様のお身体に触れることが大きな意味を持つと考えています。少しセンシティブな内容になりますが、亡くなられた方の御身体は実際「冷たく」なっています。ご生前のぬくもりがありません。このことは、とても辛く悲しいことです。ただ、その実感がご家族様にとって大切な人が亡くなったんだということを受け入れる重要な瞬間だとも言えます。今までありがとうという感謝の気持ちを込めて、そしてこれからの旅路の無事を祈ってご家族が故人様の御身体に触れながら旅支度をすること、またそっと手を添えたりと、少しでもお身体に触れていただくだけでも実感が全く異なると思います。
納棺は、こういったご家族様のお気持ちの整理としての役割を持つ重要な儀式です。故人様との最期の時間を心残りのないように過ごしていただくため、ぜひご家族様には、納棺に立ち合われることをおすすめいたします。